UI/UX編 / 2章 情報設計(IA)

情報設計(IA)

情報が多いほど「どう並べ・分類するか」が使いやすさを決める。整理の5軸LATCH、利用者の頭の中を探るカードソート、現在地を示すナビ/パンくず。情報設計(IA)の核を、なぜそうなったかの歴史から学ぶ。

ねらい

ものが10個なら、適当に置いても見つかる。でも10000個になったら、置き方を間違えただけで「あるのに、見つからない」が起きる。

Webサイトも同じだ。ページが増えるほど、デザインの良し悪しは「色」や「形」ではなく、情報をどう並べ、どう分類したかで決まる。この「並べ方・分け方の設計」を、情報設計(Information Architecture、略してIA)と呼ぶ。

このクエストのねらいは一つ。「探し物が見つかる」とは、実は「今どこにいて、何が探せるか分かる」ことだ——これを理由ごと身につけること。きれいに飾る前に、まず迷子を出さない。その土台を作る話だ。

情報が少ない 適当でも見つかる 情報が多い 並べ方で勝負が決まる
図1:情報が増えるほど、見つかるかどうかは「飾り」より「並べ方・分け方」で決まる。これがIAの出番。

何への反作用だったか ― 「情報が多すぎる」という新しい困りごと

新しい考え方は、いつも新しい困りごとへの答えとして生まれる。IAも例外ではない。

20世紀の後半、世界に情報があふれ始めた。本、新聞、テレビ、そして地図やデータ。量が増えすぎて、人は「知りたいことが、目の前にあるのに見つけられない」という状態に陥った。この苦しさに名前をつけた人がいる。アメリカのリチャード・S・ワーマンだ。彼はこれを情報不安(情報が多すぎて、かえって何も分からなくなる状態)と呼んだ。

ワーマンの発想がすごいのは、ここからだ。彼は元々建築家だった。建物を設計するように、情報にも設計が要ると考えた。バラバラの情報をただ積み上げるのではなく、人が迷わず歩ける「構造」を先に建てる。これを彼は情報建築(英語で Information Architecture。Architecture は「建築」という意味)と名づけ、自らを**情報建築家(インフォメーション・アーキテクト)**と称した(1976年)。冒頭でIAの正体として出した英語の Architecture は、まさにこの「建築」と同じ語だ。建築家ワーマンが情報を建てた——だから Architecture(建築)なのである。

困りごと(20世紀後半) 情報があふれる あるのに見つからない =情報不安 答え ワーマンの発想 建物のように情報も設計する 迷わず歩ける構造を建てる =情報建築(Architecture=建築)
図2:IAは「情報が多すぎる」という新しい困りごとへの答え。建築家ワーマンが「情報も建てるもの」と捉え直した。Architecture は建築と同じ語。

そして時代がWebに移ると、この困りごとは爆発した。ページが何千、何万と増えるWebサイトは、まさに「情報があふれて迷子になる場所」そのものだったからだ。1998年、ローゼンフェルドとモービルの二人が、IAをWeb向けにまとめた本を出す。表紙にシロクマが描かれていたことからシロクマ本と呼ばれ、Web制作者のバイブルになった。IAは「建築の比喩」から「Webの実務」へと降りてきた。1976年に芽吹いた言葉が、約20年かけてWebの時代に咲いたわけだ。

整理の5つの軸 ― LATCH(ラッチ)

では、情報はどう並べればいいのか。「並べ方なんて無限にある」と思うかもしれない。だがワーマンは、人間が情報を整理する方法は、たった5通りしかないと言い切った。彼は当初これを**「5つの帽子掛け(Five Hat Racks)」と呼んだ。のちにその5つの頭文字をとってLATCH(ラッチ)**と呼ばれるようになる。

  • Location(位置)… 場所で並べる。例:地図、座席表、体の部位ごとの説明。
  • Alphabet(五十音・アルファベット)… 名前順で並べる。例:辞書、電話帳、社員名簿。
  • Time(時間)… 時の流れで並べる。例:年表、履歴、ニュースの新着順。
  • Category(カテゴリ)… 仲間ごとに分ける。例:メニューの「前菜・主菜・デザート」、服の「トップス・ボトムス」。
  • Hierarchy(階層)… 量や程度の大小で序列をつける。例:価格の安い順、人気ランキング、評価の高い順。

ここで時間(T)と階層(H)は、どちらも「順に並べる」ので混ざりやすい。違いはこうだ。時間Tは「いつか」で並べる。階層Hは「どれが上か(大小・量・順位)」で並べる。同じ並べ替えでも、手がかりにしているものが違う。

同じ100冊の本でも、「著者名順(A)」「出版年順(T)」「ジャンル別(C)」「売れた順(H)」と、軸を変えれば見え方がまるで変わる。正解は一つではない。「利用者が何を手がかりに探すか」で、選ぶ軸が決まる。これがLATCHの肝だ。

同じ情報 = 5通りの並べ方しかない(LATCH) L 位置 地図・座席 A 名前順 五十音/英字 辞書・名簿 T 時間 =いつか 年表・新着 C カテゴリ 仲間で分類 H 階層 =どれが上か 順位・大小 どの軸を選ぶかは「利用者が何で探すか」で決まる
図3:人が情報を整理する方法は5つだけ(LATCH)。Tは「いつか」、Hは「どれが上か」で線引きする。中身は同じでも、選ぶ軸で見え方が変わる。

カテゴリは「作り手の頭」で決めない ― カードソート

5つの軸のうち、Webで一番悩むのが**カテゴリ(C)**だ。「このページは、どのグループに入れる?」という分類の問題。ここで一番やりがちな失敗がある。作り手の頭の中の分類を、そのまま利用者に押しつけることだ。

たとえば会社のサイトで、社内の部署名そのままに「営業部のページ」「総務部のページ」と分けたとする。作り手には自然でも、訪れた人は「自分の知りたいことが、どの部署の担当か」なんて知らない。分類が作り手目線だと、利用者は迷子になる。

ではどうするか。利用者の頭の中の分類を、直接のぞきに行く。その道具がカードソートだ。やり方は単純。ページの名前を1枚ずつカードに書き、何人かの利用者に「仲間だと思うものでグループを作って」と頼む。すると、作り手では思いつかなかった「利用者にとって自然なまとまり」が浮かび上がる。分類を勘ではなく、観察で決めるための方法だ。

バラバラのカード(ページ名) 利用者が 仲間分け 利用者の自然なまとまり グループ1 グループ2
図4:カードソート。利用者に仲間分けしてもらい、作り手では気づけない「自然な分類」を見つける。勘でなく観察で決める。

「3クリック以内」より「現在地が分かる」 ― ナビとパンくず

IAでよく言われる古い迷信がある。「目的地まで3クリック以内にすれば使いやすい」というものだ。一見もっともらしい。だが、これは半分間違いだ。

考えてみてほしい。階段を10段のぼるのは平気でも、目隠しで3段のぼるのは怖い。クリックの「回数」が問題なのではない。今どこにいて、次にどこへ行けば何があるか、分かっているか——これが問題なのだ。実際、ポーターという人が44人・約620回の操作を調べたところ、「3クリックを超えたから人が離れる(=離脱する)」という証拠は、ほとんど見つからなかった。

だから、IAが本当に保証すべきはこうだ。いつでも「現在地」と「行ける先」が見える状態を作る。それを担うのがナビゲーション(サイトの案内表示。どこに何があるかのメニュー)と、パンくず(今いるページが全体のどこかを示す、入口からの道しるべ)だ。パンくずは、童話『ヘンゼルとグレーテル』で森に落としたパンくずが由来。たどれば必ず入口へ戻れる、という安心を作る。

× 回数は少ないが迷子 「ここどこ?」 ○ 現在地と道が見える パンくず: ナビ:行ける先が見える
図5:大事なのはクリック回数ではない。パンくず(来た道)とナビ(行ける先)で、いつでも現在地が分かること。

これは「文字の階層」「近接」「視線誘導」の情報版だ

最後に、このクエストを他とつなげておく。IAは、まったく新しい話ではない。前に学んだ原則が、サイト全体の規模に拡大しただけだ。

タイポグラフィ編で「見出し・小見出し・本文」と文字に序列(階層)をつけたのを覚えているか。あれは一枚のページの中の話。IAの階層(H)は、それをサイト全体に広げたものだ。トップページが一番大きな見出し、その下にカテゴリ、さらに下に個別ページ——同じ「大小で序列を作る」考えが、規模だけ大きくなっている。

レイアウト編の近接(関係あるものは近く、無いものは遠くに置く)も同じだ。一枚の中で要素をまとめた近接が、IAでは「関係あるページを同じカテゴリにまとめる」=**カテゴリ(C)**になる。

そして準備編で学んだ視線誘導(見る人の目を、見てほしい順に導くこと)も拡大する。一枚の中では「目を通す一本の道」を作る話だった。サイト全体でその“道”を担うのがナビとパンくずだ。いつも同じ場所にある案内が、サイト全体を貫く一本の道筋になり、利用者の目を「現在地→行ける先」へと導く。

つまりIAとは、ページの中で効く原則を、サイトという大きな器でやり直すこと。新しく覚え直すのではなく、スケールを変えて適用するだけだ。

一枚のページの中(既習) サイト全体(IA) 文字の階層(見出し) 階層(H) 近接(まとめる) カテゴリ(C) 視線誘導(目を導く道) ナビ・パンくず
図6:IAは新発明ではない。ページの中で学んだ3つの原則(階層・近接・視線誘導)を、サイトという大きな器でやり直すこと。

(補足:ここで言う階層Hは「大小・量で序列をつける」並べ方のこと。一方、トップ→カテゴリ→個別ページという入れ子の構造は、厳密にはカテゴリCの親子関係に近い。「順位づけのH」と「入れ子のC」は別物だと覚えておくと、後で混乱しない。)

見分け方 ― このサイトはIAが効いているか

最後に、サイトの「並べ方」が良いか悪いかを見抜く目を持とう。次が揃っていれば、IAがきちんと効いている。

  • どのページにいても、**今どこにいるか(現在地)**がひと目で分かる
  • **行ける先(ナビ)**が、いつも同じ場所に見えている
  • **入口へ戻る道(パンくずやロゴ)**が、必ず用意されている
  • カテゴリの名前が、利用者の言葉で書かれている(社内用語・専門用語でない)
  • 並べ方の軸(LATCHのどれか)が一貫していて、途中でブレない

逆に「ページは多いのに、なぜか欲しいものに辿りつけない」サイトは、たいてい分類が作り手目線か、現在地が見えないかのどちらかだ。飾りを足す前に、まずこの土台を直す。それがIAの仕事だ。

ロゴ(=入口へ戻れる) ナビ(行ける先) パンくず(現在地) 利用者の言葉で書いた中身
図7:現在地(パンくず)・行ける先(ナビ)・戻る道(ロゴ)が常にある。これがIAの効いたサイトのサイン。

これらは別々のルールではなく、すべて**「利用者を迷子にしない」という一つの目的**から出ている。掟を丸暗記するのではなく、この目的を覚えれば、掟は自然に思い出せる。

譜例

棚(design-gallery)で、ナビ・パンくず・カテゴリ分けの実例を見て、本文の特徴がどう現れているか確かめよう。

見るときは、図7の5つ(現在地・行ける先・戻る道・利用者の言葉・軸の一貫)がいくつ当てはまるかを数えてみるとよい。

練習・チェック

  1. 身近なWebサイトを1つ選び、「見分け方」の5つのうち、いくつ当てはまるか数えてみよう。3つ以上なら、IAがよく効いている。
  2. お気に入りのお店(飲食店でも本屋でも)のメニューや棚を、LATCHの5軸のうちどれで並んでいるか当ててみよう。別の軸に変えたら、もっと探しやすくなる場面はあるか?
  3. 友達のサイトが「ページはあるのに辿りつけない」とき、原因を2つに絞ってみよう。——分類が作り手目線になっていないか? 現在地(パンくず・ナビ)が見えていないか?

用語 GLOSSARY

情報設計(IA)Information Architecture
情報を「どう並べ、どう分類し、どう案内するか」を設計すること。サイトのページが増えるほど、使いやすさを左右する土台になる。
情報不安information anxiety
情報が多すぎて、かえって何が大事か・どこにあるか分からなくなる状態。ワーマンが名づけた、IAが解こうとした困りごと。
情報建築家information architect
建物を設計するように、情報の構造を設計する人。ワーマンが自らをこう称し、IAという考えが始まった。
LATCHラッチ
人が情報を整理する方法は5つしかない、という考え。Location(位置)・Alphabet(五十音/アルファベット)・Time(時間)・Category(カテゴリ)・Hierarchy(階層)の頭文字。
カテゴリcategory
仲間ごとに情報をまとめたグループ。例:服を「トップス・ボトムス」に分けること。LATCHの「C」。
階層hierarchy
大小や量・順位で情報に序列をつけること。例:人気ランキング、安い順。LATCHの「H」。文字の見出しの序列を、サイト全体に広げた考えにもつながる。
カードソートcard sorting
ページ名を書いたカードを、利用者に「仲間だと思うもの」でグループ分けしてもらう方法。作り手では気づけない自然な分類を見つける。
ナビゲーションnavigation
サイトの案内表示。どこに何があるかを示すメニューのこと。「今いる場所から、どこへ行けるか」を見せる。
パンくずbreadcrumbs
今いるページが全体のどこかを示す、入口からの道しるべ。童話で森に落としたパンくずが由来で、たどれば入口へ戻れる。
シロクマ本polar bear book
ローゼンフェルド&モービル『Information Architecture for the World Wide Web』(1998)の通称。表紙にシロクマが描かれた、Web IAの定番書。
近接proximity
関係のあるものは近くに、無いものは遠くに置く原則。レイアウト編で学んだもので、IAでは「関係あるページを同じカテゴリにまとめる」形になる。
視線誘導しせんゆうどう
見る人の目を、見てほしい順に導くこと。準備編で学んだ、一枚の中で「目を通す一本の道」を作る考え。IAではサイト全体のナビ・パンくずがその道になる。
3クリック・ルールthree-click rule
目的地まで3クリック以内にすべき、という昔の通説。実際には回数より「現在地が分かるか」が大事だと反証されている。
ユーザビリティusability
使いやすさのこと。迷わず・間違えず・気持ちよく目的にたどり着けるか、を指す。
離脱りだつ
サイトを途中であきらめて閉じて去ること。離脱が多い=使いにくいサイン。

RULES TO CITE

  • カテゴリ(分類)は作り手の頭で決めない。ページ名をカードに書き、何人かの利用者に「仲間だと思うもの」でグループを作ってもらい(カードソート)、出てきたまとまりを採用する(典拠5)
  • 並べ方は、必ずLATCHの5軸(位置・五十音/アルファベット・時間・カテゴリ・階層)のどれかを選ぶ。「利用者が何を手がかりに探すか」で軸を決め、途中でブレさせない(典拠2)
  • どのページにいても、現在地(パンくず)・行ける先(ナビ)・入口へ戻る道(ロゴ)の3つを必ず画面に出す。「3クリック以内か」ではなく「今どこか分かるか」で判断する(典拠6)
  • カテゴリやメニューの名前は、社内用語・専門用語でなく、利用者がふだん使う言葉で書く(典拠4:利用者中心の分類)
  • ナビゲーション(案内メニュー)は、どのページでも同じ位置に置いて動かさない。場所が変わると現在地の感覚が壊れる(典拠4・6)
  • 迷子が出るサイトを直すときは、飾りを足す前に2点を疑う。分類が作り手目線になっていないか/現在地が見えていないか(典拠5・6)

典拠 SOURCES

  • Richard Saul Wurman ― 自らを「Information Architect(情報建築家)」と称し概念を提唱(1976年、米国建築家協会AIA全国大会のテーマ The Architecture of Information として広く打ち出した)。元は建築家。先行して Wurman & Joel Katz「Beyond Graphics: The Architecture of Information」(AIA Journal, 1975) で語が現れる
  • Richard Saul Wurman『Information Anxiety』(Doubleday, 1989) ― 「情報不安」を提唱。整理の方法は5つしかないという考え(原題 Five Hat Racks=5つの帽子掛け)を示した。のちに Location/Alphabet/Time/Category/Hierarchy の頭文字をとり LATCH と呼ばれるようになる
  • Richard Saul Wurman『Information Architects』(Graphis, 1996) ― 「情報建築家」の仕事を体系化。この頃から information architecture の語がWeb期に向けて定着していく
  • Louis Rosenfeld & Peter Morville『Information Architecture for the World Wide Web』(O'Reilly, 1998) ― 表紙のシロクマから「シロクマ本(polar bear book)」と呼ばれるWeb IAの定番書
  • カードソート(card sorting)― 利用者にカードを仲間分けさせ分類を探る手法。元は20世紀半ばの認知心理学の手法で、誰か一人の発明ではない。Webの情報設計では1990年代のユーザビリティ実務(Jakob Nielsen, Donna Spencer ら)を通じて定着した
  • Joshua Porter「Testing the Three-Click Rule」(User Interface Engineering, 2003) ― 44名・約620タスクの調査で、クリック数と離脱・満足度に明確な相関がないことを実証。回数より「現在地の明快さ」が重要と論じた

譜例(実例)

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